ジョイス・トラベルビ

経歴と背景

経歴背景
1924米、世界初の総合大学看護学部としてエール大学看護学部発足
1926アメリカに生まれる
1929世界恐慌
1934赤十字社連盟とICN:フローレンス・ナイチンゲール財団を設立
1941第二次世界大戦勃発
194620歳 ニューオーリンズ にあるチャリティー病院の看護学校で看護基礎教育を終了
1948WHO発足
195226歳ニューオーリンズにあるディポール病院アフィリエイト学校で精神看護を教え始める
195630歳その他チャリティ病院看護学校・ルイジアナ州立大学、ニューヨーク大学、ミシシッピ大学、ルイジアナ州立大学から看護学士号を得る
195933歳エール大学から修士号を得る
196337歳看護雑誌に論文を発表し始める
1964看護婦養成法(米)
196640歳「Interpersonal Aspect of Nursing」を出版
196943歳「Intervention in Psychiatric Nursing」を出版
197044歳ホテルデュー看護学校でプロジェクト・ディレクターに任命される
197347
フロリダで博士課程の勉強を始めるも、学業成就を前にこの年の末死去

トラベルビの定義

人間とは?

  • 人間は独自的でかけがえのない個人であり、常に生成・進化・変化のプロセスの中にいるもの
  • この世界において一度だけの存在、すなわち、かつて存在した、あるいはこれから存在するであろうどんな人とも、似てはいても同じではありえない存在

◆相違点◆

ナイチンゲールが人間は統一的で全て共通した千兆・変化のプロセスの中に存在し、自然の一部として一体化してとらえているのに対し、トラベルビは、人間は独自的であるために、同一な人間は存在せず、1人1人が独自の生成・進化・変化のプロセスの中に存在し、自然の物理的側面を超越する生来の能力を持つものと捉えている点。

◆類似点◆

両者共に人間とは、常に変化し成長していく可能性のある存在であり、それを行う人間独自の能力(認識)を有するとしている点

健康とは?

トラベルビは健康を主観的基準と客観的基準により定義している。
主観的健康:個人個人が安寧と定めた状態と、身体的・情緒的・精神的状態についての自己評価とが一致していること。

客観的健康:診察・臨床検査による測定・協会指導者や心理相談員による評価などで識別できる病気・身体障害・欠陥がないこと

◆相違点◆

  • ナイチンゲールが疾病や障害のない状態をいうだけでなく、それらがあっても、その人や周囲の人々のもてる能力が十分に発揮できる状態であれば健康であるとしているのに対し、トラベルビは病気・身体障害・欠陥のないこととしている点。
  • ナイチンゲールが環境の程度・状態に強く影響されることを重視しているのに対し、トラベルビは個人の身体・心理・精神的状態を重視している点。
  • ナイチンゲールは個人にも集団にも目を向ける傾向があり、トラベルビは個人に目を向ける傾向がある点

◆類似点◆

  • 両者共に健康は身体的なものにとどまらず、精神・心の面にも視点をおいて定義している点。
  • 健康についての一応の定義はあるものの、健康の概念は十分に説明されておらず、明確な定義が存在しない点。

看護とは?

看護とは、専門実務看護婦が個人・家族・地域社会が病気や苦難を体験しないように防いだり、それに立ち向かうように援助し、必要な時はそれらの体験の中に意味を見出すことができるように彼らを援助する対人関係のプロセスである。

ナイチンゲールトラベルビ
ほかの人が健康で無いとき
病気の患者の周りの環境を整える必要のある時
病気・苦難を防ぎ、立ち向かうよう援助する時
体験の中に意味を見出せるように援助する時
場所最適な環境条件が提供される必要のある場所個人・家族・地域社会
看護の対象:すべての人々看護の対象:サービスを必要とする個人や家族
内容・自然が働きかけるのに最もよい状態に患者をおくことで自然回復過程が順調に進むように、またその回復過程を妨害しないようにその働きを助けること

・患者の生命力の消耗を最小にするような環境に整えることでその生命力に力を貸すこと
・目的をもち、進歩した思慮深い方法で変化を確認し、かつ生じさせること
・病気・不具・苦難を防ぎ、できるだけ最高の健康水準を保つように行動する生活様式を確認するよう、個人や家族あるいは地域社会を援助するために努力すること
・個人と家族が(もし必要なら)病気と苦難の中に見出すことができるよう援助すること

◆相違点◆

ナイチンゲールが病気の人を囲む環境を重視し、看護はその環境を整えることとしているに対し、トラベルビは、環境よりも人間対人間の関係を重視し、看護は対人関係のプロセスであるとしている点

◆類似点◆

  • 両者共に看護とは病人、つまり人間の看護であって病気の看護ではないと指摘している点
  • ナイチンゲールもトラベルビも病気の予防に触れている点

Keyword

  • 人間対人間の関係
  • 看護婦・患者相互作用
  • ラボート
  • 対人関係のプロセス

参考文献

  • Joys Trabelbee著:長谷川浩・藤枝知子訳 人間対人間の看護 第一版 医学書院
  • 都留伸子著:看護理論家とその業績 第1版 医学書院
  • 都留伸子著:看護理論家とその業績 第2版 医学書院
  • 小玉香津子・高崎絹子著:看護双書②看護学概論 第二版 文光堂
  • 井上幸子・平山朝子・金子道子著:看護学体系第1巻 看護とは 三秀舎
  • 金井一薫著:ナイチンゲール看護論入門 現代社

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