A市に住むBさん(40歳、経産婦)は、妊娠20週0日である。夫(42歳、会社員)、長女のCちゃん(5歳)の3人暮らし。朝食を終えた午前8時、夫は倒壊した家屋に両下肢が挟まれ身動きがとれなくなった。一緒にいたBさんとCちゃんは無事だったが、慌てるBさんのそばでCちゃんは泣きながら座りこんでいた。午前10時、夫は救急隊に救出されたが、下肢の感覚はなくなっていた。病院に搬送された夫は、その日のうちに入院となった。
【問題118】搬送直後の夫の血液検査データで、高値が予想されるされるのはどれか。2つ選べ。
1.カリウム
2.カルシウム
3.ヘモグロビン
4.総コレステロール
5.クレアチンキナーゼ
【解答】1・5
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【解説】
1:Bさんは、両下肢を挟まれ身動きができなくなっていたことから、血流損傷、筋損傷などにより、クラッシュ症候群、局所症状としてコンパートメント症候群を伴っていることが推測される。
よって、カリウム値の高値、クレアチンキナーゼの高値が予想される。
この予防、治療には大量の水分補給が必要で、点滴がない状況では水分補給を促すことが大切。救出したら、透析できる施設にできるだけ早く運ぶ必要があり、救急では最重傷患者として扱う。
2:カルシウムでは無く、カリウムの高値が予想される。
クラッシュ症候群で急速に状態が悪化し死に至るのは、高カリウム血症が原因で心臓が止まるため。
3:損傷した筋肉細胞からカリウム、ミオグロビンなどが静脈、体循環に流れこむため、ミオグロビンの高値が考えられる。
4:「1」の解説を参照
5:「1」の解説を参照
クラッシュ症候群によって、カリウム値の高値、クレアチンキナーゼの高値、ミオグロビンの高値が予想される。
【問題119】被災当日にBさんはCちゃんとともに避難所に入所した。被災後1日、Bさんは巡回してきた看護師に「今妊娠20週目ですが、おなかが張ることがあります」と話した。看護師が確認する項目で優先度が高いのはどれか。
1.下肢の浮腫の程度
2.食事の摂取状況
3.性器出血の有無
4.排泄状況
【解答】3
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【解説】
1:クラッシュ症候群の特徴的な症状は、下肢の腫脹・水疱、患肢の知覚・運動低下、ショック、黒色から褐色の尿 (ポートワイン尿)があるが、災害によるストレスでは切迫流産が起こる可能性もあるので、性器出血のほうが優先度が高い。
2:災害によるストレスでは食欲低下も起こる可能性もあるが、性器出血のほうが優先度が高い。
3:Bさんは妊娠20週であり、切迫流産の可能性があるため、性器出血の有無の確認は優先度が高い。出血が認められた場合には適切な治療、処置が必要である。妊娠の継続は可能である。
4:災害によるストレスでは排泄障害が起こる可能性もあるが、性器出血のほうが優先度が高い。
【問題120】 Bさんに異常は認められなかったが、Cちゃんも不安な表情でBさんの傍にいる姿をみて、看護師はBさんとCちゃんは福祉避難所への移動が必要ではないかと考えた。福祉避難所への移動のために看護師が連携する者で適切なのはどれか。
1.精神科医
2.民生委員
3.A市の保健師
4.ボランティアの保育士
【解答】3
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【解説】
一般の避難所には、市の保健師等が健康相談のための巡回を行います。巡回する保健師等は要配慮者に対し面談を行い、福祉避難所への避難が必要と思われる人(主に高齢 者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者)の情報を収集します。
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