Aさん(92歳、女性)は、脳梗塞の後遺症のため要介護で、2年前から特別養護老人ホームに入所している。入所時は、日常生活は全介助で、話しかけるとうなずいたり首を振るなど自分の意思を伝えることができた。Aさんは歌が好きで、歌に関するレクリエーションには車椅子で参加し、笑顔がみられていた。家族は週1回、面会に来ていた。入所時に、Aさんは「延命処置を望まない、家族は「できるだけ長生きしてほしい」と言っていた。最近、ほとんど食事を摂らなくなり、閉眼していることが多く、看護師や施設職員の声かけに対する反応が徐々に鈍くなってきた。家族が面会時に声をかけると、目を開け、うなずくなどの意思表示がある。Aさんの状態から、医師と相談し看護師は、看取りの準備が必要であると判断した。
【問題97】Aさんの死の迎え方を決めるために優先されるのはどれか。
1.主治医の治療方針
2.施設の職員のケア方針
3.入所時のAさんの意思
4.現在のAさんと家族の意思
【解答】4
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【解説】
1:医師と相談し看護師は、看取りの準備が必要であると判断したとあるので、治療方針については本設問では関係が薄い。
2:医師と相談し看護師は、看取りの準備が必要であると判断したとあるので、ケア方針については本設問では関係が薄い。
3:入所時のAさんの意見も必要かもしれませんが、優先順位は現在の意志である。
4:医師と相談し看護師は、看取りの準備が必要であると判断した。とあり、本人と家族の意思がもっとも重要で、Aさんと家族の意見を聞くことが最優先される。
【問題98】 Aさんは、食事を全く食べず、水分も取らなくなり、皮膚も乾燥してきた。家族は毎日面会にきて声をかけているが、反応がなくなってきた。Aさんが死に向かう中で、穏やかに過ごすための援助で適切なのはどれか。
1.好きな音楽をかける。
2.輸液療法を検討する。
3.家族の面会を制限する。
4.皮膚の清潔ケアを頻回に行う。
【解答】1
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【解説】
穏やかに過ごすための援助は何かという設問であることから、苦痛が少なく、心安く過ごせるようにすることが適切と考えることができます。
1:Aさんは歌が好きで、歌に関するレクリエーションには車椅子で参加し、笑顔がみられていた。とのことで、好きな音楽をかけることは適切な関わりであると考えることができる。
2:乾燥をしてきているので、水分が不足しているのではないかと考え、輸液療法を選んでしまいたくなりますが、全体的に臓器の働きが悪く、水分を輸液しても心臓に負荷がかかり、肺水腫を起こし、呼吸困難につながるリスクも高い。今のタイミングから輸液療法を行うことは、苦痛を与えることにつながる可能性があるため検討をすすめることはしない。
3:穏やかに過ごすための援助で家族との面談は重要である。慣れ親しんだ声は安らぎを得ることができる。また、家族もかかわれる時間ができ、本人と家族にとって重要な意味のある時間とすることができる。制限は逆効果である。
4:皮膚も乾燥してきたとあるが、清潔ケアをおこなうことは、Aさんの消耗につながることも考えられる。乾燥に対して不快を本人が感じていないようであれば頻回にすることはあまり適切とは言えない。
【問題99】3日後、Aさんは声かけに全く反応しなくなったため、看護師は死期が迫っていると判断した。看護師が観察するAさんの状態はどれか。
1.尿量の増加
2.流涎の増加
3.下痢便の出現
4.下顎呼吸の出現
【解答】4
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【解説】
1:晩期死亡前徴候では、尿量は低下する。
2:臨死期に流涎の増加がみられることはない。
3:臨死期には、下痢便ではなく、肛門括約筋の弛緩がみられる。便汁の排出が見られる。また、基本的に臓器の働きが鈍るため、便秘傾向が強くなる傾向にある。
4:死前喘鳴、下顎呼吸、チェーンストークス呼吸、四肢のチアノーゼ、橈骨動脈 の触知不可、12時間の尿量が100ml未満は全員に生じるとは限らないが、生じた場合は死亡する確率は高い(晩期死亡前徴候)。
【類題】
・第103回追試 午前60問
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