Aさん (32歳、男性)は、仕事上のストレスを抱えていた際に知人から誘われ、覚せい剤を常用するようになり逮捕された。保釈後、薬物依存症の治療を受けることができる精神科病院に入院し、治療プログラムに参加することになった。
【問題109】 入院時のAさんへの看護師の対応として適切なのはどれか。
1.二度と使用しないと約束させる。
2.回復が期待できる病気であることを伝える。
3.使用をやめられなかったことに対する反省を促す。
4.自分で薬物を断ち切る強い意志を持つように伝える。
【解答】2
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【解説】
1:自己決定を助け、前向きに立ち向かえるようにサポートすることが大切である。
2:アルコール、薬物の治療を受けることについて最優先は、自己決定であり、ますはそれを助ける。依存症の治療は、認知症などがない限り、患者の自己決定と自己責任を明確な枠組みとする。
3:まずは回復が可能なことを説明して、自己決定を促し、前向きに立ち向かえる様になった際に、反省などの促すことの方が望ましい。
4:薬物を断ち切る強い意志を持っても、それを継続することが困難なのが薬物依存症の怖さです。
【問題110】入院2週後、Aさんは病棟生活のルールを守ることができず、それを注意した看護師に対して攻撃的になることがあった。別の看護師が A さんに理由を尋ねると「指図するような話し方をされると、暴力的だった父親を思い出し、冷静でいられなくなる」と話した。このときAさんに起こっているのはどれか。
1.転移
2.逆転移
3.躁的防衛
4.反動形成
【解答】1
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【解説】
1:クライアントが、過去に重要な他者(両親など)との間で生じさせた欲求、感情、葛藤、対人関係パターンなどを、別の者(多くの場合は治療者)に対して向ける非現実的態度を転移と呼びます。
過去の重要な他者に向けられていた愛着欲求や依存欲求が向けられることを陽性転移、敵意や攻撃欲求が向けられることを陰性転移と言います。
2:治療者側が患者に対して、感情や態度を向けることであり、逆転移の感情は治療を妨害するため、抑制、除去されるべきと考えられている。
3:躁的防衛とは、原始的防衛機制の一種で、自分の大切な対象を失ったり、傷つけたりしてしまったと感じた時に生じる不安や抑うつ感などの精神的苦痛から逃れるために、現実を否定し、なんでも自分の都合のよいように解釈することをさします。一見すると楽しそうに振舞うため「躁的」と呼ばれる。
4:反動形成とは、S.フロイトが発見した防衛機制の一つ。無意識の中に抑圧されている強い感情や衝動が、意識できる側面で正反対の傾向となって行動などにあらわれること。
例として、好きな人に冷たくするなどがあげられる。
【問題111】入院後1か月、Aさんは「正直に言うと、今も覚せい剤を使いたいという気持ちがある。もし誘いがあったら、使いたい気持ちを抑えきれないだろう」と悩みを打ち明けた。Aさんの状態のアセスメントとして適切なのはどれか。
1.否認
2.共依存
3.身体依存
4.精神依存
5.離脱症状
【解答】4
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【解説】
1:否認とは、防御機制の一つで、自己がその事実をそのまま認めると不安や不快を感じるような外的な現実などを無意識に無視してしまう心の働き。
2:共依存とは、家族の中に薬物依存症者がいると、その人を「なんとかしよう」として家族はあらゆる手をつくします。懇願したり責めたり、薬を取り上げたり…。依存症者のおこす問題の尻拭いにも追われます。
3:身体依存とは、例えばアルコールが切れてくるときに脈拍が速くなったり、発汗・イライラ・手が震えたりする症状を身体依存と言います。 離脱症状が現れないようにさらに薬物を摂取するようになり、さらに身体依存が悪化していく悪循環に陥ります。
4:薬物を繰り返し摂取し、習慣的に使用していると、「ないと物足りない」「その薬物なしではいられない」感情が生まれます。このように薬物に対する渇望・欲求が生じる状態を精神依存といいます。
5:離脱症状とは薬物およびアルコールなどの嗜好品を、中止や減量した際に生じる様々な身体的・精神的症状のことで、主に自律神経症状が中心で、動悸、頭痛、めまい、イライラ、不安感、憂うつな気分などが見られる。
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